誰もが空腹感を感じつつ車で移動していた時、オヤジがおもむろにカバンの中から
パンを取り出し、「今日は夕食が遅くなるけん、これでも食っときや。」と、
僕たちに差し出してくれた。
オヤジは日頃から僕達の食事のことを気にしてくれる。オヤジだけで食べることは、
まず無い。時々こうやって、食べ物を振舞ってくれる。今夜は細長いガーリック
パンが出てきた。
一体どこで仕入れて来たんだろうと思いつつも、お構いなしに一気にかぶりつく。
「美味い!!!」
しかし、そう思った次の瞬間、パンが喉に引っかかった。飲み物が無いからだ。
「まずいか?」
ペースが遅い僕たちの食べっぷりを見てオヤジが言った。
「腐っとらんと思うけどな。パンやからカビは生えとるかもしれんが…。」
そんなことを言って笑っていたオヤジだったが、パンにかぶりついた数秒後に一言。
「パンは飲み物が無いと食えん。」